じっ、と自分とはあまり似ていない寝顔を見つめてみる。とはいっても殆どパーツは同じだから、楽しいものではない。  ――双子なんて、そんなものだ。

始めは、些細な喧嘩だった。いつもそうだ。些細だったはずの喧嘩が、段々飛躍していく。  そして何かの拍子に必ずこいつは言うのだ。悦志、僕を置いていかないでよ、と。優志があんまりにも真剣な目でそう呟くものだから、俺は必ずこう返す。馬鹿かと。  そう言うと、お互い殴り合ったりしたせいで少し潤んだ瞳を心底悲しそうに細めて優志は言う。 「どうして双子なんかに生まれたんだろう。しかもミラーツインズなんて」  これもことあるごとにほざきやがる文句で、毎度相手させられるこっちとしては堪ったものではない。終わったことに文句言うなと心底思う。大体そんな母さんに失礼なこと、兄貴に聞かせたらどんなことになるか。 「僕がなりたかったのは鏡合わせじゃないのに――」  おなじたったらよかったと、こいつは本当、ことあるごとに言う。そうしたら悦志、お前を守れるよ、などと言って笑うものだから、俺はもう呆れるしか手立てがないのだ。一体いつ、俺が、お前に守ってくれなんて頼んだだろう。  これは本当に昔からのことで、こいつが右目を失くしてから、特に顕著になった。俺が失くすはずだった右目。あの日から、優志は俺においていかないでと言うようになった。

色素の薄い、ふわふわとした髪に触れる。  同じが良かった、と俺と同じように流された前髪は、実のところ意味を持たない。  優志が欲しているのは、結局のところ同一ではないと俺は知ってる。優志の言葉は意味を持たないものが多すぎる。おいていかないでと言った、その言葉すら。だって。 「――先に置いていったのは、お前じゃねえか」  繋いでいたその手を離したのは、優志だ。たった数秒先に生まれた、それだけの理由で。

いったい俺がいつ、お前の手を離したってんだよ。